「生きるための愛を知りたい
だれかのために生き
だれかのために努力する
そんな愛を……」
会津藩武家の娘、芙美は有馬家へ嫁ぐことになった。それまで馬に剣にと天衣無縫に育ってきた芙美だったが、式の直前に、兄弟のように育った新吾への恋心に気付く…このまま、会ったこともない有馬武史のもとへ嫁ぐべきなのか、しかし、武家の娘として、一度決まったことを白紙に戻すためには死を覚悟で決断しなければならない…世は幕末、激しく揺れ動く時代から始まる壮大な大河ロマン!
WORKS作品一覧
RELEASE: 1977
幕末から戦後まで、有馬家の人々の4世代にわたる壮大な愛と人生を描いた大作。報われなくても生きていく、愛していく、その志を「あすなろ」の木に込めて──芙美から新之介と史織へ、武雄や詩絵や忍、みどりへ……次の世代へと受け継がれるべき不朽の名作です。
あらすじ
「生きるための愛を知りたい
だれかのために生き
だれかのために努力する
そんな愛を……」
会津藩武家の娘、芙美は有馬家へ嫁ぐことになった。それまで馬に剣にと天衣無縫に育ってきた芙美だったが、式の直前に、兄弟のように育った新吾への恋心に気付く…このまま、会ったこともない有馬武史のもとへ嫁ぐべきなのか、しかし、武家の娘として、一度決まったことを白紙に戻すためには死を覚悟で決断しなければならない…世は幕末、激しく揺れ動く時代から始まる壮大な大河ロマン!
作品の “みどころ”
里中満智子作品において、普遍のテーマとなっているのが「愛」です。
本作では、愛することと生き続けることは、最終的にひとつのものとして描かれています。世代を超えて、繰り返し理不尽な喪失を突き付けられていく登場人物たち。愛する人を失い、家を失い、時代そのものに踏みにじられながらも、それでも彼女たちは前を向いて生き続けることを選びます。つらくても逃げない、投げ出さない。騙されることはあっても騙すことはない。愛する人を裏切らず、どこまでも信じ続ける。
その「選び続ける」行為こそが、自分たちの愛と尊厳を守り続けることであり、次の世代への橋渡しとなっているのではないでしょうか。
生き続け、愛の形を生み出し、また次の命を育てていく──有馬家4世代の物語は、みんなが自分らしく生きることを選び、愛を証明し続けています。愛するからこそ生きる、生きるから愛せる。その循環こそ、あすなろの木が「明日なろう」と空に向かって伸び続ける姿と重なり、本作の静かで力強いメッセージとなっています。
物語は、幕末の戊辰戦争から始まり、明治、大正、そして昭和の第二次世界大戦終結まで、日本の激動の時代を背景にしています。芙美の時代から、子ども、孫、ひ孫へと受け継がれていく血脈。血のつながりや愛の深さが複雑に絡み合う、波乱万丈なドラマです。
数々の事件が登場人物の人生に大きな影響を与えている光景は、実際にあったことばかり。戊辰戦争によって故郷を追われ、関東大震災によって初恋の人を失った芙美のような女性がいたことはもちろん、異国の地でスパイ容疑をかけられ追われたり、女郎屋で命をつないだり。自分の意思とは関係ない結婚、危険思想で役人につけまわされる、不治の病──目を覆いたくなるようなことも、すべて実際にあったことばかりです。
本作は、日本の近代史の荒波がいかに人々の生活をいとも簡単に砕くかを見せつけられる、社会的記録でもあります。怒涛の展開の中で個人の愛を貫くことがいかに多難なのか、尊厳や愛がいかに守られ、失われていくのかを肌で感じることができるでしょう。
時代に引き裂かれてもまた巡り会い、愛を貫き通した芙美と新吾。
見返りを求めずに不義の子を丸ごと受け入れ、真の愛を見出した芙美と武史。
家を捨て、一途な恋心を実らせた珠絵と新之介。
すれ違いながらも、8年という歳月を待ち続けて結ばれた史織と昌平。
それぞれの愛し方を貫き、最期のときまで二人で過ごした忍と精一郎。
国境を超えた愛を見つけた、みどりとサーシャ。
深い悲しみで真っ黒になったこともありました。嫉妬や憎しみで苦しんだこともありました。しかし、決して負けてはいません。不幸にはなっていません。それぞれの愛の形を作り上げ、自身の未来を切り開いていきました。そんな中、数々の戦争と関東大震災を経験し、多くの愛する人々との別れを経験した芙美。ひ孫の幸せまでを見届けた彼女が、愛する家族たちの姿を走馬灯のように思い出しながら「生きつづけてきてよかった」とつぶやく最期は、読者に深い感動と希望を与えるでしょう。
単なるハッピーエンドではありません。人生における苦難や悲しみをすべて受け入れ、それでもなお前向きに生き抜いた一人の女性の、力強い幸福論と言えます。
人も木も、時間とともに老いていきます。しかし、それで終わりではありません。あすなろが年老いても若木が芽生えるように、人もまた命を受け継いでいきます。あすなろのように、前を向いて伸び続けていくのでしょう──。
コミックス一覧
会津藩武家の娘、芙美は有馬家へ嫁ぐことになった。それまで馬に剣にと天衣無縫に育ってきた芙美だったが、式の直前に、兄弟のように育った新吾への恋心に気付く…このまま、会ったこともない有馬武史のもとへ嫁ぐべきなのか、しかし、武家の娘として、一度決まったことを白紙に戻すためには死を覚悟で決断しなければならない…世は幕末、激しく揺れ動く時代から始まる壮大な大河ロマン!
芙美が産んだ新吾の子供は新之介と名付けられ、武史にも愛されすくすくと育っていた。しかし、いつまでも新吾に想いを残す芙美に耐えられなかった武史は女中の妙と一時の関係を持ってしまう…新吾と再会し、自分は夫である武史を愛しているとやっと気付いた芙美。幸せな日々が続くかに思えたが、妙が武史の子を身ごもっていることが分かって…!
芙美と武史は苦難を乗り越え、幸福な毎日を過ごしていた。妙が産んだ子供は史織と名付けられ、有馬家の長女として愛されて成長していた。一方、新之介は想いを寄せたおきくが死んでからというものふさぎ込んでいた。史織は密かに兄である新之介に想いを寄せていたが、病に倒れた父を安心させようと光太郎との縁談を決意する…
縁談を白紙に戻した後、史織は看護婦になるための勉強をはじめた。一緒に働く医師の晶平のことを、いつの間にか意識していた史織だったが、光太郎とのことで自分の気持ちを素直になるのが史織は怖かった…一方、珠絵と結婚した新之介は小学校の教師として働いていた。新之介の教えるクラスには新吾の娘、ふみが通っていた。
障害事件から8年の月日が経ち、史織と晶平はやっとに再会することが出来た。長い間離れ離れで想いを寄せ合った二人だったが、史織はまだ忌まわしい事件の事が忘れられないでいた…新之介と珠絵は3人の子供たちに恵まれ、幸せに暮らしていた。父に似てやさしい長男の武雄、活発な長女・詩絵、そしてひかえめな次女・忍。遊んでいた3人に突然不幸な事故が…!?
詩絵は女優としての道を進み始めた。亡き兄・武雄に似た脚本家・秋月と詩絵はいつしか愛し合い、二人で演劇をやっていこうと気持ちを確かめ合う。姉と同じように、秋月に想いを寄せていた忍は二人の仲を応援していこうと誓う。一方、二人の父・新之介は奉天の日本人学校の校長になるため、一人旅立っていった…
女優としての地位を確立した詩絵は秋月と別れ、源宗匠と結婚し、彼を心から愛し始めていた。忍は姉のために忘れようとしていた秋月と一緒になり、幸せに暮らし始める。しかし、秋月は政府の方針に反する脚本を書き続け、反体制運動に参加し、警察に追われる身となっていく。一人ロシアに立とうとした秋月だったが、忍は詩絵の力も借りて、秋月の船に乗り込むのだった…
遠い満州で忍と秋月は短い生涯を終えた。残された二人の娘・みどりはロシア人のサーシャと共に孤児として生きていた。二人が身を寄せていた家のおかみさんが死に、同じく孤児となった娘・さくらと共に、幼い3人は働きながら生活していた。一方、忍の子供が生きているということを知り、新之介と珠絵は自分たちの孫の行方を探していた。
みどりは日本で暮らし始めてからも、満州で生死が分からなくなったサーシャへの想いが忘れられないでいた。しかし、サーシャの思い出ごと自分を愛すると言う樹一郎の言葉に、みどりは結婚を決意する。結婚式当日、海軍中尉の樹一郎に友人として紹介されたのは何とあのサーシャだった!サーシャがみどりの初恋の相手と知った樹一郎はみどりが幸せになるならと身を引こうとするが…!?